検出器アレイ:CTスキャナの中心に位置する重要なコンポーネント
コンピュータ断層撮影(CT)スキャナは、緻密で強力な医療診断ツールです。CTスキャナは頭部/首、胸部、CT血管造影、腹部、骨盤の診断で広く普及するに至っています。
CTスキャナは患者の身体の、複数の「スライス」または断面画像を連続して撮影します。これは、CTスキャナの仕組みで解説されています。
最新のマルチスライスCTスキャナで重要となるコンポーネントに、検出器アレイが挙げられます。患者の身体で部分的に減衰したX線放射を検出し、デジタル信号へ変換します。このデジタル信号には、強力な画像信号プロセッサに必要なすべての情報が含まれます。CTガントリーの、複数の回転角度で取得されたX線画像を連続投影してスライスを再構築し、患者の臓器や体内組織の3D画像としてレンダリングします。
低ノイズかつ高精度な動作
検出器アレイは精密な光電子工学部品で構成されています。主な要素は次の通りです。
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シンチレーター:X線粒子を光量子へ変換します。
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フォトダイオードアレイ:フォトダイオードの要素またはピクセルを2D配置したもので、それぞれがシンチレーターから放出される光の吸収に反応し、電流を生成します。つまり、フォトダイオードは光を電流へ変換します。
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読み出しIC:検出器が患者の周囲を回転するに従い、多数の角度位置で各フォトダイオードのピクセルが生成した電流をデジタル信号へ変換する、高度に集積された半導体デバイスです。続いて、取得されたデータは画像信号プロセッサまたは画像再生装置でさらに処理されます。読み出しICは、基本的に高性能のマルチチャンネル型のアナログ-デジタル変換器の役割を果たします。
患者を通過した放射線を正確にデジタル化するため、フォトダイオードや読み出しICなど検出器アレイ内のアクティブコンポーネントは、高感度、低ノイズ、高解像度、高速性などの重要な特性を満足させなければなりません。
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高感度:身体内部の様々な組織や密度を網羅する画像を生成するために、検出器は放射量を最小限に抑えつつ、広範囲におよぶX線強度のデータを取得できなければなりません。柔らかい組織は放射線濃度が低く、X線放射をほとんど吸収しません。一方、骨格は放射線濃度が高く、放射線を大量に吸収します。高感度の検出器システムはコントラストの高い画像を生成可能で、医師が様々な体組織を明瞭に区別できます。
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低ノイズ:ノイズフロアを低くすることで検出器が微弱な入力も確実に取得できるため、強度が異なる箇所の間でコントラストを高く保てます。低ノイズ検出器は微弱信号をも取得できるため、放射量を抑えられ、患者にとってより安全なスキャナが提供されます。
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高解像度:検出器の解像度が高くなるほど、検出可能な差異が小さくなり、胸部や肺の検査などで微細構造を見分けやすくなります。
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高速性は検出器が素早い画像速度に対応できることを意味します。例えば、心臓の鼓動といった変化の激しい現象のスキャンなどで使用でき、CTガントリーの回転速度を高めることでモーションアーチファクトを削減できます。
各種のアセンブリ構成
CTスキャナの画像処理領域の大きさは、フォトダイオードアレイのサイズを決定します。したがって、光センサ入力をデジタル出力へ変換する画像処理用の読み出しICの数を決定します。
検出器のアセンブリでは、複数の読み出しICがキャリア基材に配置されます。3面へ連続して配置(3面のバタブルソリューション)するか、4面すべて(4面のバタブルソリューション)に配置できます。読み出しICの組立手法は、CTシステムのパフォーマンスを左右します。
3面のバタブルソリューションは1面にワイヤーボンドを備えており、残りの3面は隣接するICと突き合わせることができます。このソリューションは、中程度の検出範囲を備えた普及型CTシステムに最適です。
ハイエンドのCTシステムに使用される4面のバタブルソリューションでは、製造と組立でより洗練された工程が必要となりますが、検出器の画像処理領域を全ての面へ拡大できるメリットがあります。これでシステムでより大きな検出領域を確保でき、心臓などの臓器を一度の回転でスキャンできるようになります。
amsは3面と4面のバタブルを扱う高性能ソリューションを提供しており、低ノイズ、超低消費電力、高速読み出しを実現します。こうしたソリューションは、顧客が最も自由に活用できるスタンドアロンのアナログ-デジタル変換器から、単一のシリコンパッケージにフォトダイオードのアレイと読み出し回路の両方を搭載する高集積ICまで様々に及び、最高のパフォーマンスを提供します。